遺品整理の体験談から考える生前整理〜残しておきたいもの編〜
ご親族の荷物整理を通して人生を振り返り、大切な品々や思い出のつまったものを遺していく遺品整理。前回コラムでは「遺品整理から学ぶ生前整理の大切さ」について掘り下げてきました。今回は一歩踏み込んで、生前整理で残しておきたいものについて考えていきます。自分の希望と家族の希望を両方叶えて大切なものを残せるのは生前整理だからこそです。遺品整理でわかった「こんなものを残しておきたい」という意見を踏まえて、役に立つポイントをまとめてみました。
自分が残したいものと家族が捨てられないものは一致しない
前回のコラムでは、自分らしく生涯を閉じるための終活の一貫として、 体力や時間に余裕があるうちから積極的に生前整理をすることが大切であることと、生前整理のメリットについてお話してきました。生前整理が単に「亡くなる前の終活」ではなく「より自分らしく生き、大切な家族へ思いをつなげる」ためのものであることがお分かりいただけたかと思います。
(前回別記事としてご紹介しておりますので、もし詳細を読まれたい方はこちらからご覧ください。)
今回は、生前整理で残しておきたいものを考えていきますが、まずはじめに考えておきたい大切なことがあります。それは「自分が残したいものと家族が捨てられないと感じるものには大きな差異がある」ということです。
気心の知れた家族だから残したいものは分かってくれるだろうと思うかもしれませんが、意外とそうはいかないこともあります。そして、写真や手紙に代表されるように、残したいものではなくても捨てづらいものもあるということも忘れてはなりません。しかも、本人からしたら早く捨ててほしいようなものでも、家族から見れば自分の判断で捨てられないと感じる場合も多々あるのです。
つまり、何を残したいかは本人でなければわからず、家族が思い出と感じるものも聞いて見なければわかりません。それらのギャップを埋めて、本当に残したいもの・残してほしいものを確認し実現できるのが生前整理における最大のメリットのひとつです。
自分の意思を示すことで家族がラクになる
生前整理を始めるにあたって、まず、遺品整理を経験した方が大変だったことは何か確認しておきましょう。
遺品整理の苦労点は実に様々ですが、今回、赤く色付けした項目は、本人が残したいもの・大切にしているものか、何に使っていたどのようなものなのかを家族に伝えることで負担が格段に軽減できる部分です。
「亡くなった後のことを話すなんて」とタブー視をして、遺品として残したいものや、価値があって大切に扱いたいもの等の意思・情報を話さないままにしているために、親族が遺品整理時に困り果ててしまうことも多いものです。
だからこそ、生前整理で親族等に残したいものの一番目は本人が残したいもの・残したくないものは何か、荷物をどうしてほしいかの意思表示であるといえるでしょう。
自分が残したいもの・家族が残して欲しいものを話そう
先ほど「自分が残したいものと家族が遺品整理をする立場になった時に捨てられない・捨てづらいものは違う」と話しましたが、同様に、家族が思い出として残して欲しいとこだわるものが思ってもみない意外なものであったり、盲点になっているものであることも多々あるようです。
だからこそ、次の3つのステップで、自分として残したいものと家族として残したいものとをカバーし、最適な選択をすることができます。
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- 自分が何を残したいか、思いついたものをリストにする
- 家族に確認してもらう
- 家族が残してほしいものを聞いて反映する
つまり、自分と家族が思いや意思を積極的にたくさん話し合うことが満足いく生前整理のために大切だといえます。
そして、その話し合いの時間は、これまでの人生を振り返る時間であり、家族との大切な思い出の時間になるはずです。
遺品整理で捨てられなかったものを知っておこう
具体的にどんなものを残していくのか考える前に、遺品整理でどのようなものが捨てられなかった・遺品として残すものになったのかを把握しておくと、参考や気づきとなるでしょう。
これらを分類してみると、3つのポイントに当てはまるものがほとんどだとわかります。
- 本人にしか残せず、もう生み出せないもの 例: 写真・筆跡・声・作品等
- 本人が大切にしていたもの・本人を思い出すもの 例: 愛用していた服や時計等の身につける小物、趣味のもの等
- 思い出の品 例: 一緒に買った旅行のおみやげ・記念の品等
特に、本人を思い出すものや思い出の品は、家族が持っているイメージとギャップがあることも多いようです。この点をしっかり話し合うことで本人の希望も家族のニーズも満たしたよりよい遺品の選択が可能になるでしょう。
残したいもの①:いざという時の情報一覧
銀行や保険等の情報と書類をまとめる
自分が亡くなった時、すぐに必要となるのは様々な手続きです。しかし、銀行口座や保険の資料等、必要なものがどこにあるか分からず、バラバラになって見つからない場合が多々あるようです。
万一のときのために、銀行通帳やカード、保険・証券関係書類、家に関する書類等の情報をまとめておき、家族に置き場所がわかるようにしておきましょう。
これらの情報は、終活の話題によく挙がるエンディングノートを活用してまとめておくのも良い方法でしょう。
◆エンディングノートとは…
万が一自分が亡くなった際に備えて、自分に関する情報や思い等、家族・友人に伝えたい大切なことを書き記しておくノートのことです。 遺書と異なり、法的な効力がなく、書き方の形式や用紙の種類、思いの変化に応じた書き直しも自由です。 近年は、多くの方に共通する記しておきたい事項をまとめたエンディングノートが多数発売され、項目に沿って記入すると大切なことがまとめられるため、手軽に始められるようになっています。 |
定期購入等の解約すべき契約の情報をまとめる
盲点となりがちな解約が必要となる契約の情報もまとめておくと良いでしょう。特に、家族が把握していない健康食品等の定期購入があった場合、知らないうちに滞納してしまいトラブルとなるケースも考えられます。
契約情報や、インターネット経由の場合はID・パスワードの情報も添えておくと万一のときに安心です。
万一のとき伝えてほしい人のリストと連絡先をまとめる
もし亡くなってしまった時、そのことを伝えたい友人・知人がいる場合は、亡くなったことを伝えてほしい方のリストと連絡先をわかりやすくまとめて家族に引き継いでおきましょう。
携帯電話の電話帳に入っているから大丈夫と思っていたのに、暗証番号やパスワードが分からないため電話帳を開けず連絡できなかったということもあるようです。携帯電話の解約時にも暗証番号等が必要になることがあるので、万一の情報がまとめてあるところに添えておくと何かと安心です。
“通帳など大事な物の保管場所がわからなく探すのに大変だった”
(30代・会社員)
“年金の手続きをするのに年金手帳の場所を誰も知らなかった。”
(30代・無職)
“加入していたことを知らなかった保険証書が見つかり、手続きが大変でした。”
(30代・パート)
“母が父の知らないところで注文していた健康食品や化粧品について、料金の支払いの有無、返品が可能かなどをメーカーに問い合わせて完了させるのが地味に大変でした。健康食品については、商品が発送済みでかつ一括での払い込みができなかったため、銀行に入れておかなければならないお金も計算する必要がありました。”
(30代・映像プロジェクトマネージャー)
“亡くなった本人だけが知っているサブスクやネットサービスの契約状況、パソコンでのやりとりなどの把握が意外と大変でした。携帯電話の解約も意外と手間取りました。”
(40代・会社員)
残したいもの ②:自分が亡くなったら新しく生み出せないもの
遺影にしてほしい写真や残してほしい写真をまとめる
遺品整理時に捨てられなかったものの第1位は写真・アルバムでした。
写真は生きている時かつ元気な時にしか撮れないこともあり、家族が遺品として大切に保管したいと考えるもののひとつです。しかしそればかりではなく、写真を処分することに抵抗や申し訳なさがあり、全て取っている場合も頻繁にあるようです。
また、遺影用の写真がなく、過去の写真から切り出してみようとするもののなかなか適した写真が見つからなかったり、小さく写っている集合写真から引き伸ばして画質が悪くなってしまったというケースに遭遇した方も多くいらっしゃるでしょう。
本人は写りが悪いから捨ててほしいと思うような写真でも、遺影として選定されてしまったり、なんとなく捨てられないという状況になってしまうことがあるのです。
だからこそ、元気なうちに遺影にできる写真を準備したり、家族写真を撮ったり、残してほしい写真を選定しておくと自分も家族も快適で安心です。
その際、家族等に協力してもらって、スキャンやデジタル化したり、特別なものだけをプリントしておくと、より保管しやすく、見返しやすくなるのでおすすめです。
もちろん、次にまた新しい笑顔が写真に残せる時を楽しみに歩んで行けると良いですね。
姿・声・筆跡で家族にメッセージを
遺品整理では直筆のメモ・日記等(6.9%)や手紙(5.8%)も捨てられなかったものの上位として意見が挙がりました。また、本人のビデオや音声録音を大切に残したという意見もありました。
本人しか生み出せない、生きている時ならではのものなので貴重な遺品ではありますが、写真と同じく、自分では恥ずかしいような内容や走り書きの筆跡のメモを残されたりする可能性も否定できません。
そんな時は、状況を逆手にとって、家族への思いや感謝を綴った手紙や音声・動画のメッセージを残してみませんか。
高齢等で体が弱ってしまうと、字を書くことがままならなくなってしまったり、立ち座り・発声がうまくいかなくなることもよくあるものです。
だからこそ元気なうちに、今ならではの自分らしい筆跡・声・姿を残し、同じく生きていなければ生み出せない「思い」も残すと、大切な家族への最高の贈り物になるかもしれません。
“故人の写真や書き記したものが捨てられなかった。”
(40代・会社員)
“故人の直筆文字のもの、手帳や、書きかけの手紙、写真が捨てられなかった。”
(50代・主婦)
“家族で旅行したときに撮った集合写真を残しました。”
(30代・パート)
残したいもの ③:自分の思いや自分らしさが詰まったもの
自分が亡くなった後も大切にしてほしいもの
ここからは、自分の思いと、家族と話した残してほしいものを参考に考えていきましょう。
まずは、常に愛用しているものや思い入れのあるもの、趣味の道具や衣服等「パッと思いつく大切なもの」を選ぶと良いのではないでしょうか。
中には「この着物は娘にあげたい」「ゴルフ道具を息子に使ってほしい」等、これからも使い続けてほしいものもあるかもしれません。また、形見として持っていてほしいものがある場合もあるでしょう。
譲りたい人に直接伝え、良い状態で保管しておきたいものですね。
家族が望む自分の思い出のもの
自分では特に考えていなくても、例えば「おばあちゃんといえば編み物だから編み針や毛糸がほしい」等、家族から見た「自分らしい品」や「一緒に過ごした証と感じる品」があるかもしれません。
自分自身ではわからないものも多いので是非家族の意見を聞いて、楽しい思い出話とともに準備できると素敵です。
自分が一緒に旅立ちたいものも伝えよう
自分の大切なものを考える中で、最後はこの着物を着て旅立ちたい、棺にこれを一緒に入れてほしいという希望が出てきた場合は、是非家族に伝え、保管場所はどこかも知っておいてもらうと良いでしょう。
生前整理を前向きに行うことで、旅立ちまで自分らしく、安らかな心で迎えることができるのではないでしょうか。
“大事にしていた懐中時計は捨てられませんでした。”
(50代・自営業)
“昔に母が購入した陶器の人形が捨てられなかったです。おそらく土産もので高価なものではないと思っていますが、捨てられずにおります。”
(30代・クリエイター)
“生前使用していた時計、メガネ、財布、携帯電話、服などは捨てずに取っておきました。”
(30代・サービス業)
“祖母に作ってもらったマフラー、祖母が使用していたひざ掛けを残しました。”
(20代・医療事務)
遺品を保管する家族の目線で考える生前整理
残したい大切なものの柱が有れば整理が進みやすい
ここまでで、特に大切なものとして残したいものを考えてきました。
生前整理をする本人は「残したいもの」という視点で考えがちですが、受け継ぐ家族から見ると「今後も自分の荷物として保管し続けるもの」であることを忘れてはいけません。
量にもよりますが、それなりの収納場所を継続的に使い続けて保管するわけですから、あれもこれも捨てられないという状態では、家族が荷物を持ち続けることが不可能になったり、生活スペースを遺品のために圧迫してしまうことにもなりかねません。
遺品整理では、もちろん、整理していくもの一つ一つの要不要を判断していく過程を経ていくものではありますが、柱として特に大切な遺品を考えておくことで、むやみに「あれもこれも残したい」という状況になりにくくなるので、残したい遺品の重要度を考えておくことは保管する側の家族を思いやることにもつながると言えるでしょう。
トランクルームを活用した生前整理と遺品保管
ここまで、生前整理の大切さと大切に残したいものについて考えてきましたが、毎日忙しい日々の中で、限られたスペースで整理・収納がなかなかできないという人がほとんどではないでしょうか。
そんな時には、トランクルームを利用することで収納スペースや自宅で整理をするスペースが増えるのでおすすめです。
整理スペースを広く取るためのトランクルーム利用
日常生活を過ごしながら生前整理をするにはスペースがなかなか取れないという方も多いでしょう。そんな時には、トランクルームに使用頻度の低い荷物を一時置きして、自宅での整理スペースを広くとって作業する方法はいかがでしょうか。
もちろん、これから作業していきたいものをトランクルームに一時置きして整理していくことも良い方法の一つです。整理を進めて、今後整理すべきものを減らしていくイメージになるので作業が捗るきっかけになるかもしれません。
荷物が多い・重い場合にはお荷物運搬サービスを活用することで、自宅にいながらいつでも荷物の出し入れと配送が可能になるので、ご高齢の方にも安心です。
遺品として残す予定のものを梱包してトランクルームで保管
例えば、家族にゆくゆくは譲りたい着物のように、すぐ使うことはなく、将来遺品として譲りたいものもあるのではないでしょうか。
そのような場合には、残しておきたい荷物を梱包してトランクルームに置いておくという方法もあります。
自宅にも家族の生活スペースにも置かないことで荷物がかさばらずスッキリするだけでなく、大切な遺品が置いてある場所が自分にも家族にもすぐわかるという利点もあります。
また「トランクルームにないものは捨てていいよ」といった方法をとると、いざという時の遺品整理がスムーズに進むでしょう。
実際に家族に渡す時や、今後継続的に保管する時にトランクルームを使い続けるかも含めて相談し、有効活用することで、生前整理が非常に効率的に進むでしょう。
調査結果を受けてのまとめ
今回はアンケート結果をもとに、遺品整理の経験談を踏まえて生前整理で残しておきたいものについて考え、トランクルームの有効活用法についてもお話しました。
まず自分自身が残したい・譲りたいという思いを明確化し、家族の意見も取り入れることで、生前整理・遺品整理の負担が格段に軽減されることを今回よくおわかりいただけたかと思います。
そして、品物だけではなく、生きているからこそ残せるものも元気なうちに残していくことが家族への大切な贈り物になります。そして、家族と相談する遺品整理は、自分らしさや自分の思い出を改めて知ることができ、新鮮な気持ちと同時に、家族の心に残る大切な思い出となることでしょう。
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遺品整理・生前整理について、これまでのコラムはこちらです。ユーザーアンケートには実に心動かされるエピソードや役に立つ経験談がいっぱいありますので是非ご覧ください。
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【調査概要】
調査対象:トランクルームユーザー調査
回答数:400サンプル
回答期間:2021年12月03日から12月07日までの5日間
調査方法:インターネットによるユーザーリサーチ